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created at 2012-01-24 07:52:43 UTC

歴史学用語みたいなやつについて私見。 NHK の大河ドラマで皇室のことを「王家」と呼んでいるシーンに怒っている人が一定数いる。歴史の有識者いわく「天皇」という概念が当時まだ成り立っていなかったから「王家」という言葉を使った、皇室を貶める意図はない、とのことだが、まあ実際のところそうなのだろう、歴史家の意図は。

んでこの騒動自体はどうでもいいと僕は思っている。しかし、「王家」というのは歴史学の用語であって、この言葉も実際のところ当時あまり使われてた記録はない。平安期の朝廷を指す「歴史家達の間の業界用語」として使われている言葉だ。

実際のところ歴史の用語にはこういうの凄く多い。最も有名な例としては「鎌倉幕府」と「室町幕府」が挙げられると思う。歴史において「鎌倉幕府」「室町幕府」という組織が存在していたことはない。

当時の時代の言葉では、「鎌倉幕府」は「鎌倉殿」「関東」「武家」だし、「室町幕府」は「室町殿」「武家」などと呼ばれていることが多い。

そもそもいわゆる鎌倉時代からいわゆる江戸時代以前までの日本では組織や人間の名前というのはあまり重視されておらず、人名の漢字や訓みは適当に表記されるし、組織にも特に名前をつけないまま曖昧に運営されていたことが多い。

これは武家社会の本質が、公的な支配ではなく、私的な契約の集合体だったことなどに起因するところもあるのだろうが、とにかくそういう社会だった。

で。大河ドラマに限らず、教科書など教育現場、小説マンガ映画ドラマなどの娯楽で広く「鎌倉幕府」「室町幕府」などという言葉が使われる。

この幕府という言葉の正体は、鎌倉を中心とした武家の政権や京都を中心とした武家の政権に、後世の学者がいい加減に名前をつけたものにすぎない。例の「王家」という言葉も、いわゆる平安期の朝廷権力に対して後世の学者がいい加減に名前をつけたものにすぎない。すぎないんだが、平然と歴史家が使い、教育の場で使われるので、さもそのような名前と、それに対応する強固な概念があったと思い込む人が沢山いる。

沢山いるんで、「鎌倉幕府が成立した年代はいつなのか」などといったくだらない議論が論壇に花を咲かせることになる。そもそも「鎌倉幕府」などというものが成立していたことなど一度たりとてないのに。

曖昧な概念を曖昧なままにしておきたくない、という歴史家の気持ちはよく分かる。それは人間の本能でもある。でも名前をつけるという行為は極めて重大な結果を齎す。曖昧な概念を強固な概念にしてしまう「曖昧さ」という本質を隠す。これはよくない。

曖昧な概念は曖昧なまま扱わなければならない。名前をつけるのではなく、より細かく概念を分割し解析することにより、その存在を確かなものにしないといけない。と僕は思います。

まあ何がいいたいかっつーと大河ドラマのどうでもいい言葉を言葉狩りしてる奴は、まずはあらゆる本から鎌倉幕府と室町幕府って言葉を消してこい。

 
 
 
 

※ 追記
僕は、鎌倉幕府って言葉と室町幕府っていう言葉については、わりと真面目に狩るべきだと思ってます。